骨転移のある進行性乳がん患者の痛みに対する効果 ~ゾレドロン酸・デノスマブ~
デノスマブをよく知らないので薬理作用から書きたいと思います。
まず、デノスマブは一言で言うと抗体製剤です。受容体結合でケミカルメディエーターを阻害して細胞間反応をそこで停止させます。どこの受容体に結合するかというと破骨細胞とその前駆細胞です。破骨細胞の分化・誘導が阻害されて機能が停止するという機序です。
ゾレドロン酸もついでに、2リン酸同士の結合に同様の構造のビスホスホネートが入り込み偽反応をさせて停止させる。破骨細胞構成組織の作成を停止させて破骨細胞の分化を止める。
では、今回ヒットした論文↓
Pain outcomes in patients with advanced breast cancer and bone metastases: results from a randomized, double-blind study of denosumab and zoledronic acid. PMID: 22951813
論文のPECO
P: 2046人の乳がんで画像診断により骨転移が認められる患者
E: デノスマブ月1回投与
C: ゾレドロン酸月1回投与
O: 疼痛スコアの変化(※少し複雑です)
<情報の吟味>
ランダム化はされている/ITT解析かは不明/死亡・癌の進行・同意の撤回により30%が脱落/
痛みの評価であり真のアウトカム
しかし、4つ測定されておりどれがプライマリアウトカムかの言及は無い。
- ベースラインからの疼痛重症度スコアの2ポイント以上の増加した患者割合
- ベースライン時軽度疼痛から重度疼痛へと変化するまでの時間と患者割合
- ベースラインから疼痛干渉ポイントが2ポイント以上の増減
- ベースライン時疼痛干渉スコア軽度・中等度の患者が2ポイント以上増加するまでの時間
- 強オピオイド使用量と強オピオイド使用患者割合
<結果>
※試験終了18か月後にベースライン時軽度・中等度疼痛だった患者の57%が重度疼痛に移行していた。
1)の評価比較:ゾレドロン酸投与群7%に対しデノスマブ投与群3%
デノスマブ投与群の方が2ポイント以上の疼痛スコア上昇が少ない
2)の評価比較:ゾレドロン酸投与群7.4カ月に対しデノスマブ投与群8.5カ月
デノスマブ投与群の方が1カ月ほど重度疼痛への移行を遅らせる。
4)の評価比較:ゾレドロン酸投与群14.9カ月に対しデノスマブ投与群16カ月
デノスマブ投与群の方が疼痛干渉スコアの増加時間も1カ月ほど遅らせる。
- の評価比較:ゾレドロン酸投与群約12%に対しデノスマブ投与群6%
デノスマブ投与群の方が強オピオイド使用に移行する割合が少ない。
<コメント>
コスト比較
ゾメタ点滴静注バック28075円/1P
ランマーク皮下注46685円/本
ただし、ランマークは毎日のカルシウム製剤とビタミンD製剤の投与が必要になります。