薬局業務日誌

薬局で役に立つ情報を綴っていきます。

ARBとACEI 

ARBとACEI 

高血圧治療においてはガイドラインにおいても適用は同列で記載されている両者、日本では品目、使用量共にARBが多い傾向。(※厚生労働省のNDBオープンデータ参照、ただジェネリック未発売、販売時期等の影響もあるため単純比較はできない)。

まず、薬価を比較してみます。

唯一NDBに記載のあるACEIのタナトリル®(イミダプリル)を見てみます。

10mg/112.8円/錠:5mg/54.4円/錠:2.5mg/33.1円/錠

ジェネリック(※最低価格)

10mg/49.7円/錠:5mg/24.5円/錠:2.5mg/13.5円/錠

今回のNDBで最も使用量の多かったARBのミカルディス®(テルミサルタン)(※ジェネリックがまだ平成29年6月まで未発売だった影響があります)を見てみます。

80mg/174.8円/錠:40mg/115円/錠:20mg/60.9円/錠

ジェネリック(※最低価格)

80mg/69円/錠:40mg/46円/錠:20mg/24.4円/錠

どちらも常用量での使用において先発でも後発でもそれほど金額に大きな差は無い。

では効果、副作用等本質の方を比較。

検索したところテルミサルタンとエナラプリルを比較した論文がヒットしました。

Angiotensin-receptor blockade versus converting-enzyme inhibition in type 2 diabetes and nephropathy.  PMID: 15516696

<情報の吟味>

ランダム化二重盲検と記載有。「Analyses included all the randomized subjects」の記載があるためITT解析としていいと思われる。脱落はテルミサルタンで38人、エナラプリルで44人と両群ともに30%弱で、通常脱落割合は2割が妥当とされるので少し多い。

P: 35歳から80歳の2型糖尿病を患っている男女250人

E: テルミサルタンを投与

C: エナラプリルを投与

O: 一次アウトカムは5年後の糸球体ろ過率の変化

<結果>

糸球体ろ過量:エナラプリル17.9mL/分/1.73㎡ vs テルミサルタン14.9mL/分/1.73㎡

糸球体ろ過量に差は見られなかった。

サブ解析の血圧変動:

エナラプリル-8.5mmHG~+0.5mmHG vs テルミサルタン平均6.9mmHG

<安全性>

両者共通事象:脳卒中6件、クレアチニン上昇(2.3mg/dL)

テルミサルタン群:

9件のうっ血性心不全、9件の非致死的心筋梗塞、3件の心血管イベント死

エナラプリル群:

7件のうっ血性心不全、6件の非致死的心筋梗塞、2件の心血管イベント死

<コメント>

腎臓への影響も血圧への影響も両者に差は無いとの結果であり、副作用も両者で顕著な違いは無い。となると、経済的にも効能的にも差がない両者で、何故日本でARBの使用量が多いのかは不明である。

 

もう一論文を下記に紹介

 

Randomised controlled trial of dual blockade of renin-angiotensin system in patients with hypertension, microalbuminuria, and non-insulin dependent diabetes: the candesartan and lisinopril microalbuminuria (CALM) study.  PMID: 11110735

<情報の吟味>

ランダム化二重盲検の記載有。ITT解析の記載も有。全体の14人が脱落。眩暈と倦怠感で脱落(両群2名ずつ)、咳で3名(リシノプリルのみ)、両群ともに脱落割合は1割以下で問題ない。

P: 微量アルブミン尿、高血圧と診断された2型糖尿病患者30から75歳の男女199人

E: カンデサルタン投与

C: リシノプリル投与

O: 24週後の尿中アルブミン排出量と血圧変動

 

<結果>

SBP平均血圧変化:リシノプリル10.7mmHG vs カンデサルタン10.4mmHG

DBP平均血圧変化:リシノプリル16.7mmHG vs カンデサルタン14.1mmHG

両群ともに差は無い。

尿中アルブミンクレアチニン比:リシノプリル39% vs カンデサルタン29%

若干カンデサルタンの方が少ない。

空咳はやはりACEIのエナラプリルに多いが、効果において両者に大きな差は見られない。