薬局業務日誌

薬局で役に立つ情報を綴っていきます。

抗ヒスタミン薬は新薬を出すよりも高用量の検討をした方が良くないですか? ~ まぁGEの事とかあるから新薬出した方がいいんだろうけどさ… ~

 

 2016年11月にビラスチンとデスロラタジンが販売されました。さらに、2017年11月にはルパタジンが販売されましたね。正直「ナンで?」と思いました。2000年以降に発売されたものだけでもベポタスチン、フェキソフェナジン、オロパタジン、ロラタジン、レボセチリジンと5種類あります。そしてさらに直近で3種追加... こんなに必要ですかね?

 PMID: 17345837全文読めませんが、この文献では新薬のはずのデスロラタジンの効果の強さはビリから2番目なんですが? どういうこと?

 実際の感触もAが効かなくてBに変えたけどあまり変わらないとかまあまあな頻度でありましたよ。どれも同じかなぐらいですよ。ジャンプアップするほどの変化もないのに次から次へと発売され、数ばかり増える、と不満を持っていたわけですが、ある論文↓に目が留まりました。

The effectiveness of levocetirizine and desloratadine in up to 4 times conventional doses in difficult-to-treat urticaria. PMID: 20226302

 この論文のBackgroundには「欧州ガイドラインでは慢性蕁麻疹において、通常用量では効果が得られない場合は用量を4倍に増やすことを推奨している」と記載があるのです。

 え? 4倍ですか? 

 その時、頭をよぎったのが、通常用量でコントロール不良で上限用量に増量しても十分な効果が得られてない患者さんがしばしばいることを。その方々に4倍量はどうなんだろう? 当然添付文書には記載がないので適用外使用になるわけですが、そう思ったわけです。論文を読んでみましたので紹介します。

<妥当性の検討>

 「Study design」の最初に「double-blind, randomized」、「Result」に「intention-to-treat」とあります。「Statistics」にそれぞれの用量の成功率を30%ずつと予想で95%の検出率を得るためのサンプルサイズを80人と算出したと書かれてます。

 妥当性は問題ないでしょう。

P:19歳から67歳の慢性蕁麻疹の患者80人(内男性27人、女性53人)

E:レボセチリジン投与群40人

C:デスロラタジン投与群40人

O:蕁麻疹による不快感、皮疹の数、QOLを評価

<結果>

 皮疹の数はレボセチリジンにおいては20㎎まで増やすことで55%改善、デスロラタジンは20㎎まで増量で30%改善。

 VASで評価した不快感はレボセチリジンにおいては5㎎までで52%、10㎎までで65%、20㎎までで74%の人が改善したと回答。デスロラタジンにおいては、5㎎までで41%、10㎎までで56%、20㎎までで63%の人が改善したと回答。

 眠気はレボセチリジンおいては75%の人がほぼ変化なしと回答。デスロラタジンにおいては55%の人がほぼ変化なしと回答。

 副作用については、レボセチリジンで6件、デスロラタジンで11件報告された。症状は臀部の痛み、不安感、吐き気、頭痛、口腔内不快感。中止になるような重篤例はなかった。

<コメント>

 用量を増やしていくと発赤も不快感も改善率が上昇傾向にありますね。しかも眠気を含む副作用に関しても重篤例もなく、忍容性は高そうです。6倍でもいけそうな勢いです。

 今回は慢性蕁麻疹が対象でしたが、花粉症の既存の用量で改善しない例や喘息(※エピナスチンは適応あり)で吸入が困難でコントロール不良例などに応用できるのではないでしょうか? 同じような構造式を並べるよりも増量を検討した方が有用な気がします。