バファリンA81とバイアスピリンの違いは? -論文読んで業務負担を軽減ー
~ついでに製剤学もご一緒に~
低用量アスピリン錠剤は主に2系統あります。
・配合錠系(バファリンA81、ファモター配合錠A81等)
・腸溶錠系(バイアスピリン、アスピリン腸溶錠「※後発品メーカー名」等)
配合錠系:アスピリンと緩衝制酸剤のダイアルミネート(アルミニウムグリシネート・炭酸マグネシウム)を合剤にしたもの
腸溶錠系:アスピリンをpH5.5以上で溶解するメタクリル酸コポリマーLDでコーティングした腸溶錠
この製剤的工夫はアセチルサリチル酸(アスピリン)が胃酸により加水分解されるのを防ぐための工夫です。
では何故加水分解されるとマズいのか?
加水分解されるとサリチル酸ができます。サリチル酸のpKaは2.78。身近な食用の酸であるお酢のpKaが4.76です。お酢の100倍の酸性度があります!かなり強い酸なので喉などの粘膜を痛めてしまいます。そのため加水分解されない工夫が必要となっているのですね。
しかし、この2つの製剤学的工夫、使い勝手の良さに差がついてしまいました。
ダイアルミネート配合錠は湿度変化が大きいです。
下記バファリンA81インタビューフォームより。
条件:無包装、25℃/湿度75%RH シャーレ(開放)、保存期間1か月
→ 1週間後に性状(外観)変化(濃い橙色の斑点あり)。サリチル酸量増加、1カ月後に 1.4%(規格内)。アスピリン含量1カ月後に2.2%低下(規格値内)。
対してバイアスピリンはというと(インタビューフォームより)
条件:30℃ /湿度80%RH 6ヵ月 褐色ガラス瓶(開放)6ヵ月保存
→サリチル酸のわずかな増加(0.9%:規格範囲内)。硬度が高くなる傾向。他の項目では変化はなく、湿度に対して安定。
このように配合錠系は湿度に不安定である為、防湿性、ガスバリア性、遮光性などに優れたアルミSP包装(アルミ箔に低密度ポリエチレンなどの熱可塑性高分子フィルムを重ねたラミネートフィルムで作られたヒートシール型の包装形態)となっています。
これが扱いづらい...
一包化が必要な方の場合、分包紙に1錠ずつ貼り付ける必要が出てしまいます...
非常に手間です...
服用する際もちぎって包装から出さなければならないのでまた手間です...
腸溶錠系なら
他の錠剤と一緒に一包化することができます!
さらにバラ包装の採用もあるため自動分包機を使用することができます!
機械と手作業、業務効率に雲泥の差が出ます。
疑義照会して変更されては如何?
アスピリンが81mgと100mgで効果が違うのではと思った方、いるかもしれません。心血管イベント予防に差は無かったそうです。下記の論文を参照ください。アスピリンジレンマなんて無いことにも気が付かれると思います(ヒントFig.6)。
Collaborative meta-analysis of randomised trials of antiplatelet therapy for prevention of death, myocardial infarction, and stroke in high risk patients. PMID: 11786451