薬局業務日誌

薬局で役に立つ情報を綴っていきます。

タケキャブとタケプロンの比較 -値段5倍の価値はありますか?-

 2015年に武田薬品から新規に発売された消化性潰瘍・逆流性食道炎治療薬のタケキャブと既に同社から10年以上前に発売されたタケプロン、この2つに違いはあるのでしょうか?

 

・ガチンコ対決しているの?

タケキャブの成分ボノプラザン(vonoprazan)で検索し、RCTで絞り込むとabstractとfree full textを含めてもたったの18件しかヒットしませんでした。しかも著者は18件中17件が日本人!

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 まぁ日本の製薬企業の医薬品だからそこは仕方ないかもしれませんね。でも臨床試験に関してはどこの国の医薬品だろうと関係ないはず。ヒットした中の2番目にlansoprazoleの文字が⁉ これはランソプラゾールとのRCTでは? しかし、さらにその先に「single-blind extension study」...え⁉

 非劣性試験でしかも二重盲検でもないって...評価者バイアスは入るし、優位性は語れないし何のためにやった?と思いました。結果はランソプラゾールに劣っていないということでした。他に優位性RCTの論文はヒットしませんでした。非劣性試験しかありませんから当然優位性は語れません。今のところタケキャブを優先的に使用する根拠は全くないと言えます。

・実はすでにめちゃくちゃ処方されていた!

平成28年4月から平成29年3月のNDBデータではPPIの中でなんと9位でした。優位性は全くと言っていいほど示されておりません。また、タケプロンは既にジェネリックも出ています。その値段は約5分の1! それでもタケキャブが処方されてしまうんですね...

平成28年4月~平成29年3月のタケキャブ10㎎の薬価は160.1円/錠、ランソプラゾールOD15㎎錠は31.5円/錠でその差は128.6円です。この期間のタケキャブ10㎎錠の処方数は83,628,972錠でした。これがランソプラゾールOD15㎎錠であれば約100億円安く済んだことになります。全医療費からすれば1%にも満たないですが100億円自体は無駄にするには大きすぎる大金です。

・薬剤師の出番ですよ

論文を読めばタケキャブに優位性などないことは明らかです。同等の医療であるにもかかわらず高額な方を売りつけられているんですね。この詐欺のような現状を指摘できるのは処方箋を受け取り、監査し、調剤している薬剤師以外にいません。某勘違いコメンテーターのように「無駄だから治療をやめろ!」などと言っているわけではないんですね。「同等で安い方があるんだからそっちにして!」と国民に代わって交渉するそんな役割も薬剤師にはあるんです。薬剤師が介入したなら国民の財産100億円も無駄にせずに済んだかもしれません。是非論文を読んで処方箋に介入していきましょう!