インフルエンザワクチンは“毎年”受けましょう! 現シーズンのワクチンが最も効果的です
インフルエンザワクチンを理解するにはインフルエンザウイルスについて知っておいた方がわかりやすいのでざっくりと説明いたします。3つの型があって、各特徴は次の通りです。
A型:人畜共通(人間以外にも感染しますよってことです)。亜型がたくさんあります。
それゆえ変異も多く、世界的大流行をたびたび引き起こします。
当然毎年流行します。
B型:ヒトのみに感染します。亜型はありません。毎年流行します。
C型:普通の風邪とかわりません(ワクチンも作ってません)。
流行するのはAとBなのでワクチンが作られるのもAとBです。世界保健機関 (WHO) が流行する可能性が高いウイルス型(型にはA/H1N1、A/H3N2、B型などがあります)を毎年発表します。この系統にもさらに種類があり、その中から選択された株に基づいてワクチンが作成されます。国立感染症研究所のホームページに発表された株が掲示されています。
1つの系統を1価と数えて、4つで混ぜれば4価ワクチンと言います。発表されている株も4つなので作成されているワクチンも4価がほとんどです。
発表されている株を見ると昨年や一昨年と同じものもあります。ワクチンは毎年打つ必要があるのでしょうか?
これを検証した研究があるのでご紹介します。2つご紹介します。
1.The impact of repeated vaccination on influenza vaccine effectiveness: a systematic review and meta-analysis. PMID: 30626399
2.Association of Prior Vaccination With Influenza Vaccine Effectiveness in Children Receiving Live Attenuated or Inactivated Vaccine. PMID: 30646262
1はインフルエンザワクチンの接種頻度と予防率の関連を調査した研究です。複数の文献を分析したメタアナリシスです。3種の系統で3通りの検討をしています。
系統:H1N1 / H3N2 / B
① 今シーズン&前シーズン投与VS前シーズン投与のみ
② 今シーズン投与のみVS今シーズンも前シーズンも投与してない
③ 今シーズン&前シーズン投与VS今シーズン投与のみ
ごちゃ混ぜバイアスの指標となる異質性は検討法別に以下の通りでした。
① H1N1 0% /H3N2 4% /B 26%
② H1N1 26% /H3N2 0% /B 0%
③ H1N1 0% /H3N2 35% /B 0%
全体としてごちゃ混ぜバイアスリスクは低リスクでしょうか。
結果は以下の通りでした。
②のワクチン無しと有りではどの系統においても大きさ差があり、やはりワクチンは有益であると言えます。前年のみと前年&今年投与では今年も投与した方がよさそうです。今年&前年と今年のみでは結果はどちらがいいとは判断できない結果でした。全体を通して言えるのはやはり現シーズンのワクチンは打った方が予防効果は高いと言えます。
2の研究も系統は同じH1N1 / H3N2 / Bで検討しています。さらに弱毒化ワクチンと不活化ワクチンでも分けて検討しています。検討法は以下の通りです。
① 試験登録前年と今回の試験両方投与
② 今回の試験のみ
③ 試験登録前年のみ
④ 今回の試験でも試験登録前年も投与してない
この4通りで検証しています。結果は以下の通りでした。
成績が良かったのは今回の臨床試験による投与を行った①②群でした。前年のみでも効果がないわけではありませんが、ばらつきが大きいです。この結果においても現シーズンのワクチンを打つことで予防効果が高まると言えます。
ワクチンの予防効果はもう常識ともいえる状況であるにも関わらず、未だに不要論や怪しい民間療法が飛び交っています。さらに日本で酷いのは不要論を提唱する医療従事者が多数いることです。
医師法 第一条:
医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
薬剤師法 第一条:
薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
法律に上記が明記されているわけですから、公衆衛生の要であるワクチンを否定してしまうような医師、薬剤師は免許を持つ資格はないと思います。