薬局業務日誌

薬局で役に立つ情報を綴っていきます。

認知症治療薬のup-titrationの根拠は?

まずはすでにジェネリックも出ているアリセプトから、

アルツハイマー認知症

成人:ドネペジル1日1回3mgから開始 1週間以上あけて5mgに増量

     ※ 高度アルツハイマー認知症患者の場合は5mgで4週間以上あけて10mgに増量(適宜減量なので10mgがMAX

レビー小体型認知症

成人:ドネペジル塩酸塩1日1回3mgから開始 1週間以上あけて5mgに増量 5mgで4週間以上あけて10mgに増量する。

    ※症状により5mgまで減量できる。

《レニミール》

ガランタミン 1回4mgを1日2回から開始 

4週間後に1回8mgを1日2回に増量

症状に応じて1回12mgを1日2回まで増量できる

※増量する場合は変更前の用量で4週間以上服用した後に増量する。

《リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ》

リバスチグミンとして1日1回4.5mgから開始

原則4週毎に4.5mgずつ増量

維持量として1日1回18mg

※1日1回9mgを開始用量で原則として4週後に18mgに増量することもできる。

《メマリー》

メマンチン酸として1日1回5mgから開始

1週間に5mgずつ増量 

維持量として1日1回20mg服用

まず、ドネペジルから

Donepezil :tolerability and safety in Alzheimer disease. Int Clin pract 2002;56:710-17.

この臨床試験では、5㎎投与を1週間後に10㎎に増量してます。

A 24-week, double-blind, placebo-controled trial of donepezil in patients with Alzheimer disease.

neurology. 2001;57:489-495

この臨床試験では4週間後に5㎎から10㎎に増量してます。

この2つの副作用発現頻度を比較すると、

一つ目の臨床試験では吐き気と下痢がそれぞれ21%、16%でした(placebo:6%、4%)。

それに対して、2つ目の臨床試験では吐き気と下痢がそれぞれ11%、7%(placebo:9%、7%)でした。

この結果を基にこの4週間後に10㎎へ増量の設定がなされています。

次にレニミールとリバスタッチ(=イクセロン)ですが無料でネットからだけだと十分な論文が取れませんでした(T_T)

論文を取り寄せればいいんですが… なにせお金に余裕がないもんで、何でもかんでも取れないという状況…

すみません。

では次にメマリーへ

メマリーの薬理はコリンエステラーゼ阻害ではなく、グルタミン酸受容体であるNMDA受容体において選択的に拮抗するというものですね。

Safety and tolerability of once-daily versus twice-daily memantine: a randomised, double-blind study in moderate to severe Alzheimer's disease.

チェック

ランダム化されているか?→ されている

ITT解析か?→ ITT解析である

サンプル数は十分か?→ パワー分析は行われていない。

サンプル数が十分かは疑問ですが…

3つの投与スケジュールの比較をしています。

① 1日2回投与 5mg/0mg:1週間 5mg/5mg:1週間 10mg/5mg:1週間 10㎎/10mg:9週間

② 1日1回投与 5㎎:1週間 10mg:1週間 15㎎:1週間 20㎎:9週間

③ 1日1回投与 10mg:3週間 20㎎:9週間

結果:

3群ともに副作用の発生率に大きな差は見られないという結果でした。

添付文書では 成人:メマンチン1日1回5mg~開始 1週間に5mgずつ増量 維持量として1日1回20mgを経口服用

これは②のスケジュールですね。

でも別に10㎎からやっても大丈夫そうですね。

まあ、あえて急ぐ必要もないですから②のスケジュールでいいんですけどね。

やはり論文は必要ですね

効果の比較だけではなく、投与スケジュールや投与量も臨床試験が行われて、その結果から設定されているんですから。