添付文書の疑問 ~持続型インスリンの投与回数~
<introduction>
現在市販されている持続型インスリンはデテミル(レベニル®)/グラルギン(ランタス®)/デグルデク(トレシーバ®)の3種。
グラルギンとデグルデクの投与回数2回の記載が無いのに対し、デテミルは「他のインスリン製剤との併用において、2回投与する場合は」との記載がある。
基本持続型インスリンは1回のみだと思っていましたが2回投与も用法に記載があり、処方箋でも2回投与の場合がありました(その処方は何故かグラルギンでした???)。
浮かんだ疑問はまず、2回と1回投与で効果に差があるのか?/種類により差があるのか?の2点でした。
そこでこの疑問を解決するべく情報を探しました。効果に関する情報なのでRCTを探したところ下記の3本の論文が見つかりました。
- Comparison of once- versus twice-daily administration of insulin detemir, used with mealtime insulin aspart, in basal-bolus therapy for type 1 diabetes: assessment of detemir administration in a progressive treat-to-target trial (ADAPT). PMCID:PMC2606825
- A randomised, 52-week, treat-to-target trial comparing insulin detemir with insulin glargine when administered as add-on to glucose-lowering drugs in insulin-naive people with type 2 diabetes. PMCID: PMC2235909
- Comparison of insulin detemir and insulin glargine using a basal-bolus regimen in a randomized,controlled clinical study in patients with type 2 diabetes. PMID: 19565569
<情報の吟味>
3本すべてRCT、Open-label。No.2とNo.3の論文はITT解析、No.1はPPS。
脱落率はNo.1とNo.2の論文は約10%、No.3は20%
Open-labelであること以外は大きな問題は無い。
<結果>
1の論文は試験期間4か月、4か月後の1回or 2回投与のHbA1c(%)を比較。
※1日の投与単位量はどちらもほぼ同じ。
→ 1回投与8.1 ∓0.9/2回投与8.0 ∓1.0((95% CI :– 0.01 to 0.25)。
2の論文はデテミルとグラルギンの効果の比較。
プロトコルでは最初からデテミルに関して1日2回投与への途中変更を想定している。
試験期間52週間、デテミル群291人(試験完了時231人)、開始から終了までデテミル1日1回投与104人、途中2回に変更127人(内103人は12週以内に1日2回投与へ変更、残り40週は1日2回投与でコントロール)。
試験終了時の1日1回投与と2回投与のHbA1c(%)のデータがある。
→ 1回投与7.12 ∓0.11(1日平均投与単位0.52U / kg)
2回投与7.06 ∓0.10(1日平均投与単位1.00 U / kg)※約倍である。
※統計検定は行っておらず、2回投与へ変更の際の明確な基準の記載も無い。
3の文献はデテミル1日1回投与とグラルギン1日1回投与を比較。
試験期間26週間、試験終了後のデテミルとグラルギンのHbA1c(%)を比較。
→ デテミル7.13 ∓0.073 vs グラルギン6.92 ∓0.091と大きな差は無い。
<コメント>
これらのデータからデテミルの1日1回投与と2回投与の効果は大きくなさそう。
倍量使用してほぼ同程度であれば経済面でも手技面でも1日1回投与の方がよさそう。
そうすると添付文書の「他のインスリン製剤との併用において、1日2回投与する場合」というのはどんな場面を想定しているのか?
速効型を併用するにしてもグラルギンのように1回でいいのでは?と思いました。
何故なのでしょう? 知っている方がいらしたら教えてください。