薬局業務日誌

薬局で役に立つ情報を綴っていきます。

電子タバコとその周辺  安全性・禁煙補助・潜在的危険性

 直近では健康増進法改正における受動喫煙防止強化、その前は労働安全衛生法、毎年のように上がるタバコの値段と喫煙を取り巻く環境は年々厳しくなっています。そんな中、受動喫煙の問題、禁煙傾向から5年ほど前から乾燥葉や液体を電熱線で加熱し蒸気(ニコチン含有、ニコチン非含有)を発生させ、それを吸引する電子タバコが販売されました。電子タバコ副流煙が出ない、従来の紙タバコよりも健康被害のリスクが低い、禁煙を促せる等のメリットをうたっています。ただし、これらの主張は電子タバコを販売している企業が言ってるんですがね、、、

 

 そこで電子タバコの安全性や禁煙補助としての有効性あるいはその周辺事情を検証したいと思います。

Cohort study of electronic cigarette use: safety and effectiveness after 4 years of follow-up.PMID: 30657583

 この研究は従来の紙タバコのみ・電子タバコ・その両方の喫煙者を対象に4年間追跡し、喫煙関連の疾患罹患率、禁煙成功率、1日のタバコの本数の変化を検証しました。結果は以下の通りです。

表1 タバコの形態と疾患罹患率と禁煙成功率

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 口腔内の刺激に若干の差はあるものの疾患に関しては大きな差は認められませんでした。禁煙成功率は電子タバコが高い傾向であるが、有意な差は認められませんでした。

 

 もう一つ、違った視点の検証を行った研究をご紹介します。

Association of Electronic Cigarette Use With Initiation of Combustible Tobacco Product Smoking in Early Adolescence.  PMID: 26284721

 この研究は可燃性タバコ(紙タバコ、葉巻、水タバコ)を使用したことが無い14歳高校生を対象に電子タバコの使用状況とその後半年、1年後の可燃性タバコ使用開始との関連を調査したものです。

 結果は電子タバコを使用している群は使用していない群と比較して3倍以上可燃性タバコ使用開始頻度が高かったというものでした。

 この結果は現在の可燃式タバコの代替とされる電子タバコにより逆に喫煙人口を増加させる懸念を示唆しています。元も子のない結果となってしまいましたね。

 近年アメリカでは10代の電子タバコ使用率が急激に上昇しているそうです。また現在喫煙している人の約8割が18歳以下でタバコを始めているという調査報告がありますa

Preventing Tobacco Use Among Youth and Young Adults: A Report of the Surgeon General.a PMID: 22876391

 この報告で現在喫煙している30〜39歳の方を対象に、最初にタバコを始めた年齢、毎日喫煙を始めた年齢のアンケート調査結果がまとめられています。調査結果をグラフにしました。

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 アメリカの調査で日本にそのまま適応できるわけではないですが、現在喫煙している人は中学生の年齢で6割近く、高校生の年齢で9割近く喫煙経験しています。

 

 電子タバコに関してはまだ安全性・有効性の明確な情報はそろっておらず、それゆえに見解や規制も国によってまちまちです。登場してきたばかりですから当然です。今後調査が進んでいくことでしょう。ですから「安全です!」と断言しているような情報は信用できないということです。なんせ今調査中なのですから