B型肝炎ワクチンの効果はどれぐらいあるの?
針刺し事故において血液感染する可能性があり、かつ感染した場合その後の健康に大きな影響を与えるため、事故が起こった際には緊急で対応する必要があるのが、HIV、B型肝炎、C型肝炎。
その中でワクチンがあるのがB型肝炎です。
しかし、B型肝炎ワクチンは任意接種(接種費用が自己負担)で定期接種(接種費用が公費負担)ではありません。
何故なんだろうか?
定期接種(接種の努力義務のある予防接種)はA類感染症とB類感染症に分類されています。
A類感染症
(1)ジフテリア、(2)百日せき、(3)破傷風、(4)急性灰白髄炎(ポリオ)、(5)麻しん、(6)風しん、(7)日本脳炎、(8)結核、(9)Hib(ヒブ)感染症、(10)小児の肺炎球菌感染症、(11)ヒトパピローマウイルス感染症、(12)水痘
B類感染症(接種の努力義務はない)
(13)インフルエンザ、(14)高齢者の肺炎球菌感染症
上記の記載以外の感染症のワクチンは任意接種(接種費用自己負担)です。
医療従事者にとってリスクの高い感染症でワクチンがあるB型肝炎ワクチンは3回接種が推奨されています。
初回、1か月後に2回目、半年後に3回目。
まず、疑問に思ったことはワクチン打つとどれぐらい感染しなくなるのか?
なんで3回なのか?
で、調べてみました。
まず、B型肝炎ワクチンによる予防率の上昇はどれぐらい上がるのか? 下記の論文が見つかりました。
①Efficacy of a heat inactivated hepatitis B vaccine in male homosexuals: outcome of a placebo controlled double blind trial.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1547658/
②Observational study of vaccine efficacy 14 years after trial of hepatitis B vaccination in Gambian children
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC124550/
③Long-Term Protection against Carriage of Hepatitis B Virus after Infant Vaccination
http://jid.oxfordjournals.org/content/193/11/1528.long
※全文フリー
まず①
デザインはplacebo controlled double blind trial
intention to treat とは書かれていない
E:プラセボ
C:B型肝炎ワクチン(3回接種)
O:B型肝炎発症/HBs‐Ag(+)/HBc-Ab(+)
結果:
ワクチンを打つと打たないより8割ほど感染する確率を下げことができるという結果でした。
これはかなり素晴らしい結果だと思います。
何故重要な感染症で、ワクチンがあり、その効果も高いにもかかわらず、定期接種にならないのか不思議でしょうがない。
またこの試験はHBs-Abの量も測定してます。
1回目接種1か月後 33.1%の人が3-5mIU/mL
2回目接種1か月後 72.3%の人が10-99mIU/mL
3回目接種1か月後 89%の人が10-99mIU/mL(46.3%の人は≧100mIU/mL)
で、抗体量と感染防止率の間にはどんな関連性があるのか?を見ているのが②です
②のデザインは観察研究です。
抗体量における感染確率のオッズ比の比較
この結果からHBs-Abの値が≧10mIU/mLであれば感染する確率を80%抑えることができるといえるようです。
なのでHBs-Ab(+)は10-99mIU/mL、HBs-Ab(2+)は≧100mIU/mLとされているようです。
※(+)の場合は低反応者とされているようです。
そうなると①と②の論文から、やはり3回接種が推奨されるということになります。
さらに、③の論文では明確に比較されているわけではないですが、接種部位による抗体獲得量の違いが見受けられます。
接種方法の違いで8グループに分けられ、それぞれの抗体量を示しています。しかし、グループ1~3は投与経路の記載がありますが、グループ4から8では投与経路の記載がありませんので、可能性としてしか言えません。
記載があるグループ1~3のデータだけ示します。
グループ1は3回とも20㎍を筋肉注射
グループ2は1回は20㎍を筋肉注射、後の2回は2㎍を皮内注射
グループ3は3回とも2㎍を皮内注射
筋肉注射と皮内注射で量が違います。これは投与できる量の限界によるものだと思われます。
一般的に筋肉注射は4mL以下、皮下投与1mL以下、0.1-0.2mL以下とされていますので、投与部位というよりも、投与量により抗体獲得差が出るのではないかと思われます。
そうなるとやはり筋肉注射が推奨されるのではと思われます。
副反応
①の文献より
※重篤な副反応は出なかったようです。
注射部位のひりひりした痛み: プラセボ群 44~45% / ワクチン群 65~64%
痛みは注射後、1~2日後に出現している。